本気の境目。 | いくぜバンドガール。

本気の境目。

学生のころやっていた「楽しいバンド」から、今のバンドに切り替わる時期はすごく苦しかった。
いわゆる22歳で人生の転機を迎えるメンバーたちをどうするのか、そもそも自分はバンドを続けていくのか、という選択を迫られるときだ。

何度も言うが、音楽をやってるヤツが偉いわけじゃない。
毎日会社に行ったり、一日中立って働いたり、それはスゴイことだと思う。
ただ、嫌々働いたり、嫌々バンドやったり、それはカッコ悪い。

「プロってなんだ」で触れた通り、プロミュージシャンというのはとても曖昧な言葉だ。
幸い何パターンものミュージシャンに接してきていたので、「ああはなりたくない」「これはカッコ悪い」というサンプルを直接見ることができていたので、甘い希望や逆に厳しすぎる目標を持たずに済んだ。

現実には私が「女」であるということもラッキーだった。

メンバーの男の子たちは、「親(や親族)の期待」「世間体」というものが女子よりも大きく、大学→就職というルートから外れることはかなりの思い切りがないとできなかったようだ。
就職したからといってバンド活動ができなくなるわけでは全くないのだが。

とにかくそうして各自がそれなりに進路を決めたころ、はたと「バンドとしてのヴィジョン」が変わってきていることに気づいた。

簡単に言えば「続けていて、何がそこにあるのか」をリーダーとして明確に提示しなければメンバーのモチベーションの維持ができないということ。

私がそのとき提示したのは
・収入としてマイナスにならない
・やるからには、やりきる

の2点だった。全然具体的じゃないじゃん!後ろ向きじゃん!という意見もあるだろうが、収入としてマイナスにならないバンド活動というのがいかに大変なことか。
それはライブのギャランティと音源収入でスタジオ代など諸経費をまかなうということである。
はっきり言ってプロデビューなんていう曖昧な言葉よりよっぽど具体的だ。

そうした目標を掲げたとき、残念ながらこちらから言って辞めてもらったメンバーもいる。
あまりにも向上心が見せてもらえなかった。
テクニックはどうでもいいが、向上心をなくしたらそこで終わりだ。


私は「本気」なんていう目に見えないものは好きではなかった。
「本気」で「カッコ悪」かったら何にもならないし。
でも真剣にやることって、悪くない。
あのとき本気に踏み込んだことを、今は後悔していない。